「ゆとり教育 vs 反ゆとり教育」 どっちが正しい?

教育問題について話し合うとき、大抵「生徒にもっとゆとりを与えた方が良い」という主張と「生徒にはもっとたくさんの教科内容を教え込むべきだ」というどちらかの立場に分かれます。これって一体どちらが正しいのでしょうか?今回はそれについてのひとつの「答え」となる考え方を紹介します。

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【問題提起】「ゆとり教育」vs「反ゆとり教育」、どちらの意見が正しいのだろうか?

しばらく前に文部科学省は教育改革の一環として「ゆとり教育」を実施しました。しかし、それには反対する人も多く、しかも一定期間取り組んだものの目に見えた効果がなかったとされました。その結果、現在は「反ゆとり教育」に舵を取っています。ここ数年はどの学校でも授業数は増え、全体的に宿題も多くなり、テストの数も増えている傾向にあります。

こういった「反ゆとり教育」の傾向に賛同する人も多い一方で、やはりそれに対して反対する人も存在します。ではいったいどちらが正しいのでしょうか?「ゆとり教育」と「反ゆとり教育」のどっちの方が教育効果があり、どちらの方が子供のためになるのでしょうか?

【私の考え】「前提」がしっかりと定義されていないため、どちらも正しくない

私は、「ゆとり教育」と「反ゆとり教育」のどちらも残念ながら正しくない、と考えています。なぜならばどちらもその改革のもととなる「前提」が正しくないからです。前提が正しくないからどのような答えを出しても、必然的に正しくないものになってしまっている、と私たちは考えています。

では具体的にはどのような部分で「前提」が正しくないのでしょう?

現在の教育改革は基本的に「授業時間=学習時間」という考え方に基づいてデザインされています。ですから「授業時間」を増やせば学習効果が上がる、と単純に考えたりしてしまいます。

しかし
実際は「授業時間」と「学習時間」はイコールではありません
。自分が学生だった頃を思い出してみると分かると思いますが、たとえば1時間の授業中でも、友達のことを考えたり、好きな女子や男子のことを考えたり、ゲームのことを考えたり、好きなアイドルのことを考えたり、授業以外のことをいろいろしているものです。つまり「授業時間」のうち「学習時間」は、ごく一部であることが多いのです。

図にしてみるとこんな感じでしょう。

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もし、ある生徒にこの図の通りのことが起こっているとすると、授業時間は1時間あったとしても、実際の学習時間は20分、すなわち3分の1しかないということになります。もしその生徒がある教科が非常に苦手で授業に全くついていけなくなってしまったとすれば、1時間授業を受けても学習時間は0分ということだってあり得るでしょう。

この「授業時間」と「学習時間」はイコールではない、ということに気がつくと、ただ闇雲に授業時間を増やしたりテストを増やしたりすることは、生徒の学習効果を高めるためにはあまり効果的ではない、ということにも気がつきます。

そもそも、1日の授業時間を増やせば増やすほどその日の後半の生徒の集中力は下がっていくものです。ですから実質の「学習時間」の割合はさらに減っていきます。ゆえにこの方向性で改革をすればするほど思ったほどの効果は上がらない、ということが起こります。

【過去の経験】「授業時間」と「学習時間」はイコールではない、と初めて気がついた塾講師サラリーマン時代の出来事

このことに私が最初に気がついたのは、大学卒業後、静岡県の大手塾で塾講師として働いていたときのことです。

その進学塾は熱血の教授法が有名で、当時はそういう教え方にあこがれてその塾に就職しました。しかし、塾講師として実際に教えてみてすぐに違和感を感じるようになりました。確かに私が大きい声やオーバージェスチャーで授業するのを見て、生徒たちはにこにこしたり笑ったりしてはくれているのですが、みんなどこかしら受け身で、自分から身を乗り出して勉強している、という感じではないのです。

「うーん、どうしてなんだろう」と悩み続けて思って半年近く経ったある日、ひらめきはやってきました。その日は多くの学校で定期テストが次の日に控えている日でした。塾は複数の学校から生徒たちが集まっていますから、テスト範囲にはバラツキがあります。授業をやっても一部の生徒には間近に迫ったテストでは出題されない場所の授業を受けることになってしまうので、そういう日は「自習」になるのです。

私は「監督」として教室の最後部の空席に座り、生徒たちを眺めていました。しばらくして彼らの集中力がハンパなく高いことに気が付きました。特定の何人かが集中していたとかそういうことではなく、40人いる生徒全員が前のめりに教科書や問題集にかじり付くようにして集中していたのです。そしてそれは授業のチャイムが鳴るまで続きました。

チャイムが鳴ると生徒の一人は立ち上がって大きく背伸びをし「あー、よく集中した!」と満足気に言ったのです。他の生徒たちもなんとも満足気でした。みんな「意味のある時間を過ごした」と言わんばかりの顔でした。それは私が授業をしたときにできる笑顔とは明らかに違う笑顔でした。

そしてハッと気がつきました。「私は毎回1時間の授業をしていたけど、生徒に1時間の学習が起こっていたわけではなかったのだ」と。逆に「この自習時間には1時間の学習が彼らには起こったのだ」と。そして「だから彼らは大きな充実感を感じたのだ」と。
「注目すべきは『授業時間』ではなく『学習時間』であるべきなのだ

そのことに気がついてしまった私はもういてもたってもいられなくなり、その結果自分で「授業時間ではなく学習時間にフォーカスした塾」をつくることを決意します。そういう約20年前にはじめた「ソフィー学習塾」では学習時間を最大化することを第一に考え、運営しています。

【解決案】「ソフィー学習塾」で行われていること

たとえばソフィー学習塾に1時間いたら、理想はそのすべてが学習時間になることである、と考えています。

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もちろん実際には最初はすこし学校であったことについてのおしゃべりをしたり、途中で休憩をしたりするので1時間まるまる学習時間であることはないのですが、平均すると8割から9割は学習時間になっているのでは、と思います。

また、その生徒が苦手な科目に関しては、たとえば少し予習を先行させて勧めるように促すことで、「授業が全く分からない」状態に陥り1時間の授業のうち学習時間はゼロ、ということが起こらないようにして、学校の授業中の学習時間の割合も増やすような工夫をしています。

その結果、普段の学校の生活の中で学習時間が圧倒的に増えるので、生徒によってはソフィーにくるようになってから家庭学習の時間は減ったのに、成績が上がった、というケースも非常に多いです。

【学校教育への提案】「授業時間」ではなく「学習時間」を増やす工夫を!

授業時間や教科内容を増やす取り組みはすでに限界に来ています。これからの未来は膨大な量の知識が必要となる社会になってくるわけですから、教える時間や教える量を増やしたくなるのはわかります。でも、考えてみてください。1日5時間、毎日毎日人の話を座って聞いていなくちゃいけないって、苦痛じゃないですか?大人になってそういう生活に戻れって言われたら、できなくないですか?自分ができないことを子供に求めてはうまくいかないと思います。

幸いにして、「『授業時間』ではなく『学習時間』を増やすようにする」という取り組みをすれば、授業時間を減らしても学習時間を増やし、かなり学習量を増やすことは可能です。

文部科学省の方や教育改革に携わっている方、ぜひご検討ください。もしくはそのようなお知り合いの方がいらっしゃったら、ぜひこの考え方をシェアしてみてください。


【追伸】家庭での子供のサポートのポイント
家庭で子供をサポートする際には、家庭学習などの際「机に向かっている時間」などではなく、実質の「学習時間」に注目して上げるようにすると良でしょう。学校での勉強も同様。学校での授業中に「学習時間」がしっかり取れているようなら、無理に家庭学習をしなくたって良いことは少なくありません。

もちろん学校での「学習時間」は見えにくいですが、本人の顔をよく見ていると推測できることは多いです。なんだか充実して満足気な顔をして学校から帰ってきているときは、学習時間が多くとれているサインだったりします。また子供とおしゃべりしているときにたとえば「授業が楽しい」と言ったりとか、言葉のサインで分かることもあるでしょうし、もちろん実際の成績の伸びでそれがわかることも多いでしょう。

いずれにしても実質的な「学習時間」を増やすことが、今後の教育改革の鍵になってくると思いますし、家庭でもその点に着目することでサポートがしやすくなっていくと思います。是非試してみてください。

「ゆとり教育 vs 反ゆとり教育」 どっちが正しい?」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 教育改革に関する3つの「ゆるい」提案 | 哲学的な考えを現実に落としこんでデザインし、世界を変えていくプロセスを記録するブログ

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